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 HIVは恋愛やパートナーシップの障害になるでしょうか? もともと付き合っていたところに、HIV陽性ということが分かったという人たちもいるでしょうし、出会ってから間もなくて、付き合うかどうかはっきりしないという時期の場合もあります。恋愛感情と信頼関係の微妙なバランスの中で打ち明けられることもあります。
 相手が自分以外の人から感染したことが引っ掛かる人もいるでしょうし、特に問題と感じない人もいるでしょう。打ち明けられて関係を断つ人もいるかもしれませんし、かえって二人の関係を確認する良い機会になったという人もいます。
 HIV陽性をカミングアウトする事で、恋が終わるかもしれない。自分の大事な秘密を打ち明けられる相手かどうか慎重になるし、もし周りにばれたら…と思うと怖いという思いもあった。
 私が過去にカミングアウトした人は2人。HIVに感染する前に付き合っていた人だ。私にとって思い入れの強い相手でもあり、気をつけて欲しい・知ってほしいという気持ちもあって、告知した。
 そして最近は、今の彼にカミングアウトした。突然病名を伝えると彼がびっくりする気がして、まずは自分が今どんな状態なのかという説明から始めた。今薬を飲んでいる事、それを飲み続けていないと色々な病気になってしまう事、感染症だけど日常生活で人に移す事はない事。そして最後に、気をつけなければいけないのは、Hをする時だという事。結局最後まで、私から病名を伝える事はせず、この病気を知ってる?と彼に聞いたら「エイズ?」と彼が答えた。
 最初に人に告知した時は、誰かに自分の気持ちを吐き出したくて、病気の説明もちゃんと出来ずに、ただただ辛いという事ばかり伝えていた。だけど、彼との未来を繋いでいきたいと思った時には、彼が安心できる情報は何だろう?と、そればかりを探していた。HIVであっても普通の生活が送れる事や妊娠・出産も出来る事、陰性のパートナーがいる人もたくさんいる事を知ってほしかった。
 カミングアウトされて、どう受け止めたら良いのか戸惑っているかもしれないけど、私も彼の気持ちを理解したいし、ちゃんと話をして向き合っていけたらいいな。
 この文章を書いている半年前、きっかけは何気ない僕からの「なにか言いたいことある?」。付き合って一週間後、初めてのデートの夜、急に彼女が言葉に詰まり、涙を流して沈黙。僕は何を言われるのか想像も出来ない。一時間後震えながら「HIV」という言葉。今思えばきっとふられる覚悟でのカミングアウト。どう自分が見られるか怖かったとも思います。
 しかし僕はHIVに対して全く理解できませんでした。でも明るい彼女が泣きながら言った事の重大さを理解出来ない自分に悔しさで涙が出ました。HIV=少し厄介な性病? HIVとAIDSの違い?知識不足。。
 翌日から携帯で色々な事を調べました。電話相談等も利用。調べていくうちに、正直、別れたほうが楽なのかなと考えもしました。セックス(ゴム無し)もしていました。なんでその時に伝えてくれなかったのか後日聞いたら、セックス中病気の事は頭にあったが、その場では伝えることができなかったと。僕は不思議と怒りの感情は、ありませんでした。でも同時に自分への感染恐怖もありました。彼女以外の過去の経験を含め。。
 HIV検査に初めて行きました。陰性。安堵と同時に決心も出来ました。付き合った後にHIVと知ったのが良かったのか、「HIVの彼女を好きになったのではなく、普通の彼女を好きになったんだ」と。普通はだからこそ別れる決心が出来るのかもしれませんが、僕は逆でした。彼女が病気を感じさせない「普通の人」だったからかもしれません。
 もちろん生活で気を付けなければならないこともありますが、普通の恋愛をしてれば良いんだ。同情では付き合いたくなかったし、無理やり好きになりたくなかった。病気でなければ、お互いが別の人と付き合ってたかもしれない。今はこれも一つの運命と考えて、いつかは治るかもと末長く期待を持ちつつ、これからも互いに楽しく歩んでいきたいと思っています!
 病気が分かってから初めて好きになったのがあなたでした。ちゃんとうつらないようにすれば今は言わなくてもいい、隠せるんだったら隠そうかとも思いました。怖がられるんじゃないのか、嫌われるんじゃないかって思うと怖い。でも話せないってことは相手を信用してないってことなんじゃないか。そんなことぐるぐる考えながら、でも言おうと思ったのは「後出しじゃんけん」みたいにズルいことはしたくないって思ったからです。正直であろうと思ったからです。
 手をつないだり、キスしたり、セックスしたりしながらちょっとずつ恋人になっていく人もいて、そういう恋愛もいいなぁって思います。でも自分の状況と性格を考えると、なんでもしゃべりたいし、隠し事をすると相手への気持ちも変わると思ったから、告白するしかないって思ったんです。
 理由はどうあれ、自分の相手を思う気持ちにこれだけ向き合えているのはうれしいです。僕の問題をあなたにも一部背負わせることになるけど、それでも一緒にいてくれたらうれしいです。
 恋愛対象である人に病名を伝えるとういうことを、とてもエネルギーのいることだと感じているHIV陽性者は少なくありません。相手がHIV陽性者でないと理解を得にくいと思っている人も少なからずいます。自分にブレーキをかけて、人を好きにならないように、人間関係を深めないように努めているHIV陽性者もいます。前述の調査(※2)では、約8割の人が「恋人との関係や出会い」 について、自分で制約をしたり制約を受けていると感じていると答えています。
(※2)「HIV /エイズとともに生きる人々の仕事・くらし・社会 ~ HIV陽性者の生活と社会参加に関する調査報告書」 (厚生労働省 地域におけるHIV陽性者等支援のための研究班,2009)
 病名を打ち明けられても特に問題なくHIV陽性者と付き合っている人がいます。打ち明けられたタイミングや、HIVに対して持っているイメージも左右するでしょうし、二人の関係性が大きな要素であることは言うまでもありません。
 十人十色の恋愛やパートナーシップに、HIVがどのように影響を与えるのか、与えないのかはよくわかりません。少なくとも言えることは、HIV陽性者と陰性者のカップルや、HIV陽性者同志の カップルがたくさんいるということです。
 もちろん、パートナーシップを望まない人もいますが、HIVを意識したことで、以前よりもパートナーシップを大事に思ったり、安定した関係を望むように変化した人たちもいます。